立命館大学政策科学部
宮𦚰ゼミ
Beyond Borders
立命館大学政策科学部 宮𦚰ゼミの概要
発見の学問、転換の学問
学問には2つの役割がある。1つは、未知未解明のものを知として発見し、体系化する。もう1つは、既知のものを異なる知におきかえる。前者をここでは発見の学問、後者を転換の学問と呼ぶことにしよう。前者はモノなど対象自体の発見であり、後者は物事の考え方の転換である。
日本の多くの学生諸君は、前者すなわち発見の学問を出発点とし、後者すなわち転換の学問を展望しようとする。そのためには膨大な先行研究の壁を越えなければならない。すべての学問的作業の目標は、新たな知への到達であり、いかに「学問的」という冠をつけようとも、単なる模倣や整理では意義が小さい。このことが、多くの若い人たちを後者を展望するにあたって慎重という引力を生むのである。
しかしアメリカでは、多くの場合、逆のようである。すなわち後者を出発点として前者を導く。とうの昔に人口に膾炙している既存の知に疑問をはさみ、まったく別の解を導出する。
同時にこれは、ある種の諫めを求める。フィールドに出ることによって、机上の理論を現実に適用する努力と、冷徹な現実を理論化しようとする発想が接続される。外交の世界とは異なる、地についた人間関係の重要性と民主主義制度の強さに気づかせるのは、フィールドのおかげである。
ゼミの活動
研究テーマとスケジュール
政策科学の学びには、多角的視野が必要です。
各国の安全保障政策の構想を政治、経済、情報の戦争の観点から考えることは多角的視野の涵養につながります。
国内政治よりも一層明確に利益が衝突し価値が対立する国際政治を読み解くことで、政策科学の本質に迫ります。
年間スケジュール
○地政学の逆襲と歴史の逆襲
『地政学の逆襲』という本があります。戦後日本ではタブー的存在であった地政学。しかし、この翻訳の原著タイトルを直訳すると『地理学(geography) の逆襲』です。 日米が進める民主主義や価値観外交に対して、歴史や宗教と一体化した地球の地形が壁になっています。中国の「一帯一路」構想も地理的な概念に基づいています。
同書に続いて『歴史の逆襲』も刊行されました。 2人の国際政治学者が投げかける「逆襲」とは、何でしょうか?
○ウクライナ戦争
ウクライナ戦争は、ウクライナを正義とする「正義の戦い」とする見方が大勢を占めました。しかしアメリカの現実主義者の大家・ミアシャイマーの議論のように、戦争責任と戦争原因を分ける冷静な分析が出始めています。2001年の911の後も類似の熱狂と冷静な原因探しがありました。ウクライナ戦争を事例に、民主主義と戦争の関係を考えます。
ゲーミング・シミュレーション
主体的な学びを通して国際政治の動態を知る
国際政治のゲーミング・シミュレーションとは
国際政治学/国際関係論において、その研究と教育の両面で注目されてきたのが、国際政治のゲーミング・シミュレーションである。 国際政治のシミュレーションとは、いくつかのアクター(行為主体)が実際に現実もしくは仮想の状況を再現する中で、 交渉その他の方法を通して現実もしくは仮想の国際政治の予測を進めていくことである。
ゲーミング・シミュレーションの意義
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国際政治の研究上の成果:国際政治の予測
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国際政治の広義の教育上の効果:国際政治の学習を深める。更に、価値観の異なる者同士のコミュニケーション能力を高める、交渉の能力を高める、といった副次的効果もある。
ゲーミング・シミュレーションの方法
シミュレーションの実施方法は、下記の通り、多岐にわたっており、標準的というべき方法はない。
まず、シミュレーションを企画する上で、我々は、企画者の国際政治に対する認識やパラダイム(paradigm 支配的な対象把握の方法)が 明確に反映されざるを得ないという事実に必ず直面する。国際政治の現状や当為についての認識やイメージが諸個人にとって異なるゆえ、シミュレーションの方法をめぐって多くの時間を議論のために割く必要があろう。 例えば、Αさんは、国益という概念を背負った外交官の仕事こそが国際政治の中心的な要素であると認識し、Вさんはグローバルに展開する多国籍企業こそが国際経済を通して国際政治に大きな影響を与えていると考え、 CさんはNGOの主張する正義が世界に最も反映されている力なのだというイメージをもっていた場合、これらΑ、В、Cの三者の認識の差異は、シミュレーションのアクター、進行、評価といった側面の方法論の差異に結びつく。 したがって、シミュレーションの方法を議論するということは、とりもなおさず、国際政治の現状分析のみならず、国際政治のパラダイムを企画者の間ですりあわせる作業でもある。
下記の1~5に挙げた項目ごとに、方法を分類することができる。
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誰がアクター(行為主体)となるか
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国際政治の広義の教育上の効果:国際政治の学習を深める。更に、価値観の異なる者同士のコミュニケーション能力を高める、交渉の能力を高める、といった副次的効果もある。
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国際政治全般をテーマとして、特定のテーマを設けず、現実から出発するか、テーマを特定し(地域や問題領域に)、現実から出発する
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アクターの行動を、現実にどのようにして近づけるか:数値などのデータに基づいて、行動の枠を数値面で設ける(例えば、経済力や軍事力の数値化を通して)。あるいは、過去及び現在の、当該アクターの歴史と現実認識をアクター演出者が共有する
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シミュレーションの進行:ラウンド、ターンといった形で時間を区切る。1ラウンドあたりの想定時間を決めておく。あるいは、同時進行にする
主要な関連文献
・邦語
関寛治『グローバル・シミュレーション&ゲーミング』FOST、1997年
近藤敦・玉井良尚・宮脇昇「ゲーミング&シミュレーションの開発を通じた国際公共政策の理解と学習」『政策科学』23巻4号、2016年, 229-245頁
近藤敦・豊田祐輔・吉永潤・宮脇昇編『大学の学びを変えるゲーミング』晃洋書房、2019年
・外国語
Marc V.Simon and Harvey Starr, ″Two-Level Security Management and the Prospects for New Democracies," International Studies Quaterly, Vol.44,September 2000,pp.391-422.
ゼミ生募集
ゼミ生募集
宮脇ゼミの研究
2022 年度のゼミでは、日本を含む東アジア、ロシア、EU、アメリカなどを対象、21世紀に入って再び重視されている地理的・歴史的概念をふまえて、 各国の軍事・経済・エネルギー・情報・食料等の多角的な安全保障構想がどのように立案されているかを個人単位で研究します。
学士論文について
4回生のゼミは、学士論文(卒論)執筆を念頭に指導を行います。3回生時の研究をベースにステップ・アップします。
運営方法(グループワークか個人学習主体か)
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前期も後期も個人研究です。ただし関西国際関係合同ゼミ(6月頃)及び早大との合宿(12月頃)等に向けては、共同研究を少し取り入れます。
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関連する専門書の輪読
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研究テーマに応じてインタビュー調査(国内あるいは海外)
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2006年以降、毎年早大のゼミと合同合宿でロール・プレイング・シミュレーションを加えながら解決策を提案しました。また2017年度以降は秋田大学(後に、東北公益文科大学も)と合同ゼミ合宿を実施しました。
授業外学習
自主的なサブゼミがあります。
受講生に望むこと
戦争の平和の予想、選挙の予想(予測)、株価の予想等、未来を切り取る訓練をしてください。
卒業後の進路
主な進路実績(順不同)
製造業
川崎重工、キリンビール、SHARP、ダンロップ、トヨタ自動車、ヤマハ発動機、三菱重工、内田洋行、本田自動車、UNIQLO、島津製作所、堀場製作所等
金融機関
京都銀行、肥後銀行、千葉銀行、トマト銀行、野村證券等
メディア
中日新聞、京都新聞、読売新聞、テレビ栃木等
サービス
JR東日本、ANA、NTT東日本、沖縄電力、関空エアポート、弁護士法人鈴木康之法律事務所、国際協力NGO ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)、高島屋、三越伊勢丹HD、JTB、JARTIC、クレオテック等
行政機関等
防衛省、独立行政法人国際協力機構(JICA)、独立行政法人日本年金機構、東京都、大阪府、京都府、愛知県、奈良県、門真市、湖南市、等
大学院進学等
京都大学大学院、名古屋大学大学院、立命館大学大学院、松下政経塾等
留学
SUNY Baffaro、London School of Economics 、上海交通大学等
学問とは現実に多少の距離を置いてみることから始まる。
斉藤孝
教員紹介
経歴・教育
宮𦚰 昇 (Noboru Miyawaki)
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立命館大学政策科学部・政策科学研究科 教授
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北東アジアエネルギー安全保障ネットワーク 副理事長
出身大学院
1998年 早稲田大学大学院政治学研究科国際政治専攻博士課程 修了
2001年 政治学博士 (早稲田大学、学位論文『CSCE人権レジームの研究』)
1996年4月 - 1999年3月 松山大学法学部 専任講師
1999年4月 - 2004年3月 松山大学法学部 助教授
2000年9月 - 2001年7月 ハンブルク大学付属平和研究・安全保障政策研究所 客員研究員
2001年7月 - 2001年8月 欧州安全保障協力機構(OSCE)事務局プラハ事務所 現地研究員
2004年4月 - 2011年3月 立命館大学政策科学部 准教授
2009年8月 - 2010年3月 ジョージ・ワシントン大学ロシア・欧州・ユーラシア研究所(IERES)客員研究員
2011年4月 - 立命館大学政策科学部 教授
2011年4月 - 2014年3月 同 副学部長
2017年4月 - 2018年3月 モンゴル国立大学 客員研究員
2006年 - 2014年、2018年- 日本公共政策学会理事(2006年,年報編集副委員長、2019年-2020年, 同委員長)
2004年 - 2007年 日本平和学会 編集委員
2008年 分野横断型科学技術アカデミック・ロードマップ(社会システムのシミュレーション・モデリング技術分野WG )委員
2006年 - 2009年 日本シミュレーション&ゲーミング学会・近畿・東海国際関係シミュレーション・ゲーミング研究会 主査
2012年 - グローバル・ガバナンス学会理事(2012年 - 2015年 同事務局長)
2015年 日本公共政策学会2015年度学会賞選考委員会国際関係小委員会委員長
2016年 - 2018年 アジア共同体学会副理事長
2018年 日本公共政策学会2018年度研究大会企画委員会委員
2019年 - 日本安全保障貿易学会理事
2020年- 2022年 日本公共政策学会副会長
教育
教育活動(教育活動歴、担当科目等)
立命館大学にて
「Introduction to Policy Science」「Global Public Policy」「Special Lecture on Energy Security」「RP特別演習Ⅰ」「VB特殊講義(日本の国土・国境)」「特殊講義(地政学)」
「特殊講義(平和と民主主義)」「Vision Building Special Lecture Ⅱ」
「グローバル・ガバナンス」「スタートアップ・セミナー」 「リサーチ・プロジェクトⅠ」「リサーチセミナー 1」
「リサーチセミナー 2」「国際政治特論Ⅰ」「政策科学研究特別講義(プロジェクト予備演習)」「政策科学特殊講義(集中セミナー)」
「政策実践研究プロジェクト・フォロワーⅠ」「政策実践研究プロジェクト・フォロワーⅡ」
「専門演習Ⅱ」「卒業研究」
同志社大学にて
2005年 -2006年 「人間の安全保障」
名城大学にて
2016年 「国際関係論」
研究テーマ・業績
研究テーマ(キーワード)
欧州の安全保障、国際レジーム論、北東アジア、OSCE(欧州安全保障・協力機構)、石炭資源、モンゴル、日露戦争ロシア兵捕虜収容所研究
研究業績
詳細な研究業績は, 以下のリンク先をご覧ください。
http://research-db.ritsumei.ac.jp/Profiles/29/0002812/profile.html